不妊症とは
年齢とともに妊娠率が低下するのはどうして?
一般的には、避妊をせずに通常の性生活を行っているにも関わらず、1年以上妊娠しないカップルを不妊症としています。
25歳前後の夫婦が排卵周期に通常の性生活をしている場合、排卵周期毎の妊娠率は約25〜40%といわれています。この確率は女性の年齢が高くなるにつれ低下し、30歳を超えると毎年2~3%ずつ妊孕性(妊娠しやすさ)が低下すると考えられています。つまり、健康な方でも35歳の女性では25歳の女性と比べると妊娠率は半分近くに低下することになります。35歳以上の方は、早めに検査や治療を開始することが望ましいと言えます。男性の場合は年齢に伴う妊孕性の低下は比較的緩やかです。
では、どうして順調に月経が来ているようでも女性の妊孕性は年齢とともに低下していくのでしょうか。
女性の卵巣内の卵子は母親の胎内にいる時に既に作られ、出生時には約200万個の卵子が原始卵胞といわれるものに包まれて存在しています。出生後に卵子は減少し続け、思春期頃には40万個になります。排卵周期が始まると、脳下垂体からのホルモンや卵巣内のホルモンの作用で卵胞が発育しはじめます。しかし発育の様々な過程で99.9%の卵胞はいわゆる細胞死というメカニズムにより卵胞閉鎖という変性に至ります。このように、年々卵巣に残存する卵子は減少していくのです。
また、卵子は新しく作られることはなく、年月を経るうちに染色体が異常になるものが増えてくるため、受精に至っても妊娠に至らない、あるいは妊娠しても流産する確率が高くなってくるのです。
さらに、年齢とともに子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などの疾患の頻度が増えてくることも影響しています。
不妊症の原因
画像をクリックすると大きい画像で確認できます
妊娠に至るまでには様々なステップがあります。女性側では脳下垂体からのホルモンがうまく調節しあって卵巣内の卵胞が発育し、卵胞が破裂して放出された卵子が卵管へとりこまれます。卵管内で受精能をもつ精子と受精し、受精卵(胚)は分裂をくりかえしながら子宮の内宮へと送られます。到達した子宮内腔が適切な環境となっていると胚が着床し、これでようやく妊娠が成立するのです。
これらのステップのどこか一つでもうまく進まないと不妊の原因となります。不妊症のうち女性側に原因があるものが3割、男性側に原因があるものが3割、残りは両方の因子が複合しているといわれています。
不妊検査と治療の流れ
<検査および治療の流れ>
初診時
[プレコンセプション検査]
今後妊娠を予定している方、不妊検査希望で来院される方に受けて頂きたい検査です。
☆印の検査:月経中はできません。
他院で受けた検査結果がある方は持参してください。必要な項目のみ検査いたします。
①☆超音波検査
卵巣嚢腫、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮奇形などの異常がないか検査します。
②☆子宮頸癌検診
1年に1回を目安に受けましょう。
③☆膣分泌物培養
膣内と子宮内の細菌環境は同一ではありませんが、膣内細菌が正常に保たれていることも大切です。
④抗ミュラー菅ホルモン
卵巣予備能の目安になります。
発育の準備段階に入った卵胞で作られており、排卵誘発剤に対する反応を推測するのに役立ちます。予想外の値となった場合、妊活を開始する時期や不妊治療のステップアップの時期など、ライフプランの再考が必要かもしれません。
⑤感染症検査
血液や体液で感染する疾患です。治療を受けて頂くにあたって必要なだけでなく、妊娠管理の際にも必要となる検査です。
B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV
⑥クラミジア抗体
クラミジアは過去の感染が不妊原因となることがあるため、抗体検査をします。
⑦甲状腺機能
異常があると胎児に影響する場合があります。甲状腺機能低下は流産率をあげる可能性もあります。
⑧風疹抗体
妊娠中に感染すると胎児奇形の原因となることがあります。抗体価が低い場合はワクチン接種をお勧めします。接種後は2ヶ月(米国CDCの規定では1ヶ月)避妊が必要となります。
⑨血型
Rh陰性の方は、妊娠時に配慮が必要になります。
⑩血算
健康診断を受ける機会がない方は貧血がないかチェックしましょう。
<男性の検査>
①精液検査
通常の顕微鏡検査の他に、高速前進運動精子濃度の測定等があり、自費検査とさせて頂きます。
#オプション検査: SCSA検査 抗酸化力検査
精子の遺伝子が損傷を受けているものの比率が高いと、受精率に影響をします。
遺伝子損傷率の高い精子の比率を算出します。また、損傷を抑制するのに必要な抗酸化力が保たれているか調べます。
②感染症検査
女性と同様の内容です。
③風疹抗体検査
希望があればお伝えください。
2回目以降
妊活開始して半年以上経つ方、問診や上記の検査結果から必要と判断した方は下記の検査も行います。検査に適した時期がありますので、ご確認ください。
⑪☆下垂体ホルモンの基礎値
月経2〜5日目に測定します。
⑫☆子宮卵管造影
月経後から排卵までの妊娠の可能性がない時期に行います。卵管が閉塞していないか、子宮奇形の有無などを診断します。当院では水溶性造影剤を一定のスピードで注入することにより、疼痛の軽減に配慮しています。
⑬☆黄体ホルモン
排卵1週間前後に測定します。着床の維持に必要なホルモンです。
通院開始して1〜2ヶ月の時点で、治療計画書をお渡しします。
入籍の有無に関わらず、保険診療を希望する場合は必ずお二人で内容を確認して署名して頂きます。
<不妊治療開始後の注意事項>
①タイミング指導
卵胞の大きさを超音波検査で測定し、ホルモンの尿検査などを併用して排卵の時期を推定します。
自然周期にタイミング指導をご希望の場合、超音波検査を保険診療でできるのは月2回までです。3回目以降は保険適用外となります。また、初回と2回目以降の保険点数は異なります。
排卵誘発剤を使用している場合、超音波検査の保険適用は3回までとなります。
②人工授精
排卵日は排卵前日に合わせて行います。同意書を兼ねた説明用紙がありますので、受診時にお渡しします。保険適用となりますが、詳しい精液検査を同日に希望される場合は自費診療となります。
累積妊娠率の推移から、3〜4周期を目安としております。その方の不妊原因や年齢により、さらに早いステップアップをお薦めする場合があります。
③生殖補助医療
別ページで説明がありますので、参照してください。説明の冊子もございます。
月1回、体外受精無料説明会を開催しております。まだステップアップを決めてない方でも参加できます。(予約制)